笑いと恐怖は同じ/パラノーマル・フェノミナン2

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ホラー・フェイクドキュメンタリー……つまりは心霊ドキュメンタリーなのだが、ともかくそういった映像を創作するのには、いくつかの能力が必要だ。ホラー作家たちはそれぞれ異なる能力値のパラメータを持ち、恐怖の創造にあたっている。だからこそ作家性が生まれ、多様な表現が出現する。私が特に重視するのはアイデア力。「こんな見せ方があったか」と感動させてほしい。たとえば『ほんとにあった!呪いのビデオ73』収録の『花火の上』のような、「まさかこんなことが起こるのか」という驚きだ。幽霊にビックリするのもいいが、事象そのものにビックリできれば尚素晴らしい。



 最近、この「アイデア力」という能力は、そのまま「ユーモア」と言い換えて差し支えないことに気が付いた。優れた心霊ドキュメンタリー作家とは、決まってユーモアに長けているのである。前回の連載で紹介した岩澤宏樹だってそうだし、白石晃士だってそうだし、『妖怪カメラ』の寺内康太郎だってそうだ。彼らの作品を見れば、たとえ作り手がそれを意図していなくとも、思わず笑ってしまう場面に出くわすだろう。恐怖と笑いは紙一重とはよく言ったもので、作品に「驚き」を求める私としては、それが悲鳴として出力されようが、笑いとして出力されようが、どちらでも構わないし、どちらも同じだ、とまで言える。だからこそ私の敬愛するホラー作家たちは皆、ユーモアを兼ね備えているのだろう。いや、むしろ、ホラー作家に限らず、あらゆる作り手が「怖いモノ」を考えるとき前頭葉に動員するセンスって、やっぱりユーモアなんじゃないだろうか……?



 まあ、考え事は置いといて。今回紹介したいのは、まさに「ユーモア」にあふれた心霊ドキュメンタリー、『パラノーマル・フェノミナン2』だ。こちらは(物語に繋がりのない)3部作となっていて、1が白石晃士、2が村上賢司、3が古澤健がそれぞれ演出を務めている。いかにも『パラノーマル・アクティビティ』に便乗したタイトル・ビジュアルで、相当評判が悪いんだが、なかなか面白いシリーズなんで、どうかチェックしていただきたい。



 さて、その中でも私が特に推しているのが村上賢司による『パラノーマル・フェノミナン2』なのだが、たとえば白石晃士による荒唐無稽なそれとはまた違った、独特のユーモアが展開される。いろいろと似通いがちなホラーというジャンルにおいて、本作に似たものを私は知らない。



 作中では『心霊』と『アブダクション』という2編のエピソードが紹介される。『心霊』では、村上賢司自身がカメラを持ち、『心霊スポット水着でドギマギ』という番組を撮影している映像。俳優のしじみを連れて、凄惨な殺人事件が起こったというラブホテルの廃墟へと向かうのだが、ぶっちゃけ大したことは起こらない。ただ、心霊ビデオに似つかわしくない細かさのジャンプカットが気持ちいいし、そのぶん合間合間に挿入される固定カメラの映像がより不気味にうつる。村上賢司監督が鬼畜な指示を出す場面ではあまりにもしじみが可哀想で、そういった露悪的な表現に拒否反応を示す人もいるかもしれないけれども、ひたすら魅力的なしじみの姿もあわせて、心霊ビデオに慣れていない人でも面白く見られる作品だと思う。



 そして、私が特に気に入っている『アブダクション』。ある男が、新婚の妻と登山をする様子を記録したドキュメンタリー映像、というテイなのだが、これがあまりにも抜群。いわゆる「カス動画」というか……よくも、こんな質感の映像を作れるものだ。前エピソードの『心霊』も含めて、「編集」で遊ぶ傾向が見られる。これが村上賢司の作家性なのかもしれない。



 もちろん編集だけではない。一切喋らず、表情も変えず、カメラを向けると、ゆっくりと拳を持ち上げてピースサインを作る妻のキャラクターも素晴らしいし、撮影者の間の抜けたナレーションもたまらない。「面白い」とも言えるし、「不気味」とも言える、まさに紙一重の要素が詰まった、他に類を見ない作品である。しかも、ちょっと今っぽい(本作は2010年制作)んだよね。『放送禁止』や『奥様ッソ』的なアプローチが取られているし、こういう「お手製感」のある映像ってたまにバズってたりするじゃない。だからといって、真似しようと思っても難しいだろう。『アブダクション』は村上賢司にしか作れない。まったく特別なセンス、まったく特別なユーモアが必要なはずだ。



 村上賢司は『心霊ミステリーファイル 呪霊2』もスゴイし、『呪霊 THE MOVIE』も最高(白石晃士が監督を務めた続編『黒呪霊』も最高)だったし、新宿ロフトプラスワンで開催された『ファンタスマゴリア』(の様子を収録したDVD)にて上映された『残響』も大変よかった、お気に入りの作家。まだ見ていない作品もあるので、これからも追いかけていきたい。



 最後に、ここで紹介した心霊ビデオはどれも「村上賢司が作った」と決めつけて書いているが、いくつか、あるいは、すべてが本物である可能性も当然ありますので、各々で判断していただけますと幸いです。私は素晴らしいものを見たとき、作り手が存在していてほしい、と願うタチなのです。