それにしても、最も面白い映画は『遊星からの物体X』であるという映画史の常識によって、さまざまな模倣品が製造されてきたわけだ(そもそも、作品自体が『遊星よりの物体X』のリメイクではあるのだが)。有名どころで言えばロバート・ロドリゲス『パラサイト』だろう。ケヴィン・ウィリアムソンの脚本をロドリゲスが撮るなんて夢のような企画、イライジャ・ウッド、ジョシュ・ハートネット、ジョーダナ・ブリュースター、ショーン・ハトシー、クレア・デュヴァルといったスターらがティーン・エイジャーを瑞々しく演じるさわやかな“寄生系”青春ホラーである。1998年、ビッグサイズのロンTを萌え袖したヤクの売人ジョシュ・ハートネットや、新聞部長でありチアリーダーでもあるジョーダナ・ブリュースターのメガネ姿に恋をした人も多いだろう。エンディングのOasis『STAY YOUNG』も最高にゴキゲンだ。
閉鎖空間における心理的な駆け引き……もちろん『遊星からの物体X』には心理スリラーという側面だけでなく、SFホラーや、アクションとしての魅力も備わっているのだが、やはり私が好きなのは「誰が感染(寄生)しているかの疑心暗鬼」だ。心理戦自体の面白さは勿論、そういった下敷きがあると揉め事が起こりやすい、というのが素晴らしい。やっぱり映画は人と人が揉めてこそ。それが人とエイリアンであれば、尚のことだ。
さて、そんな「面白い要素」をギュッと詰め込んだ劇場未公開の映画がある。2008年制作のSFスリラー、『エイリアン・レイダース』だ。
アリゾナ州バックレイク。閉店間際のスーパーマーケットに突如、強盗団が押し入ってくる。彼らはカネを奪う素振りを見せず、スプーキーと呼ばれる男が買い物客を順番に見定め、殺す相手と、見逃す相手を決めていた。そんな中、たまたま買い物をしていた非番の警察官が銃を持ち、スプーキーを撃ち殺した。「スポッターが死んじまった」と焦燥する強盗団は、警察官を撃ち殺したのち、まだ見定めていない6人の買い物客を倉庫に監禁。「これからお前らを検査する」と言い放つのだが……
簡単な話、この中にエイリアンに寄生された宿主がいる、というワケだ。スプーキーは通称スポッターと呼ばれる能力の持ち主で、目を見るだけで宿主を見分けることができたのだが、死んでしまったからしょうがない。検査はちょっとイタイ思いをするが、人類の存続のためだ、許してくれよ。って具合で、強盗団は少なくとも悪党ではないのだが、銃を持ったガラの悪い連中に縛られている身からすれば、連中の正体なんかどうでもいいことだ。エイリアンを駆除したい強盗団と、一刻も早くこの場から逃げ出したい人質、人質に紛れ込んだ宿主、建物の周りを取り囲む警察たちの四つ巴が、だだっ広いスーパーマーケットで展開される、まさにジャンル映画である。
登場人物たちのバックボーンもなければ、ドラマもない。それぞれにあるのは「強盗」「人質」「警察」「エイリアン」という立場だけ。強盗団との交渉役を務める刑事が人質に取られているヒロインの継父なのだが、これはドラマをやる為ではなく、「警察が突入するのを渋るため」に過ぎない。ジャンル映画とは、こういった逆算によって常に成り立っている。人間ドラマが娯楽に消費される快感は、見世物としての映画が持つ正しき背徳だ。
もちろん、『遊星からの物体X』や『パラサイト』なんかに匹敵するような作品ではないが、こういったジャンル映画らしいジャンル映画が埋もれているのは、どうにも切ない。キャストだって、『24 -TWENTY FOUR-』のトニー・アルメイダでお馴染みカルロス・バーナードに、『プリズン・ブレイク』のシーノートでお馴染みロックモンド・ダンバーと、平成海外ドラマファンにはたまらない面子なのに。ああ、今ってもう平成じゃないんだった……。
