
日本でも毎度大人気となるエジプト展。今春はあべのハルカス美術館で開催中で、3月20日から大盛況だ。「
ブルックリン博物館所蔵 特別展古代エジプト」は日によって入場規制がかかるほどだ。本展は河江肖剰(かわえゆきのり)古代エジプト考古学者/名古屋大学デジタル人文社会科学研究推進センター教授が監修している展示で、ブルックリン博物館のコレクションから約150点が集結している。
彫刻、棺、宝飾品、土器、パピルス、人間やネコのミイラのほか、映像で解説されるピラミッドの中の様子など、エジプト文明の深い謎を紐解いていく内容になっている。興味深いのが、当時のエジプト人たちの暮らしにフォーカスされたコーナーだ。ピラミッドを作った労働者たちのリアルな暮らしや、ミイラの作り方、壁画やパピルスに残された人々のメッセージが分かる。
日本人はなぜエジプト文明に惹かれるのか

さて、日本人がエジプト文明に惹かれる要素として1つ提案したいのが「死生観へのシンパシー」だ。広く知られていることであるが、古代エジプトでは『人は死後、来世で復活し、永遠の命を得ることができる』と信じられており、それは人間に限らず、動物たちも同様だ。(展示品の中にはネコや鳥などのミイラもあった)ざっくりまとめると、死後の世界が人生のセカンドシーズンで、復活を祈るという死生観である。日本でも、死後の世界の存在や魂の在り方など、生死で別れようと、この世とあの世の繋がりがあることが仏教の教えでも分かる。
しかし、西洋の考えでは死後は天国か地獄かで完全に分岐してしまう。ミケランジェロの作品からも分かるように、中心となるのがイエス・キリストの救済思想なのである。
エジプトと日本、遠い国でも死生観の類似から深い興味を示してしまうのは、DNAから反応してしまうことなのかもしれない。
結構いい暮らし?労働者たちの食事事情

本展でとくに興味深かったのが、ピラミッドを作った労働者(奴隷)たちの暮らしぶりだ。過去にも数回エジプト展に行ったことがあるが、なかなか当時の人々の生活事情までは開設されていなかった。
これまでの研究でも、労働者たちは鞭を打たれながら過酷な環境の中で無理やり働かされていた、とされていたが、実はそうでもないらしいということが分かった。隣接する古代都市の発掘から、当時の労働者たちの食事内容が明らかになったのだが、労働者たちは4日に一度、1個9500キロカロリーのパンが支給されていたそうだ。さらに、ナイル川で獲れるナマズやナイルバーチのほか、ヒツジやヤギなどの動物性タンパク質も数日に一度は食べており、ビールも飲んでいたことが明記されている。
主食に豊富なメインディッシュ、さらに飲酒もしていたとすると、奴隷という身分のイメージとは少し異なる印象だ。ちなみに、9500キロカロリーは現在の成人の4~5日分の食事量に相当する。
食事にすると、Mサイズのピザ2枚(約4000キロカロリー)をビール2杯(約400キロカロリー)で流し込み、ラーメン・チャーハン・唐揚げセット(約2000キロカロリー)を平らげた上、おやつにアイスクリーム3個とドーナツ3個(約1800キロカロリー)を食べても足りない量だ。
さらに意外だった発見が、労働者たちの住まいが、王族や貴族たちとそこまで遠くない場所にあったことだ。身分や貧富の差は確かにあっても、完全に乖離した居住ではなかったのかもしれない。
河江教授によるピラミッドの最新研究結果
本展では、河江教授たち研究者たちが、実際にピラミッドの中に入って行く様子が映像で観られる。実際に現場に行かなくてもその場にいるような謎空間に我々も没入できるのが魅力だ。
ブルックリン博物館所蔵 特別展古代エジプトは、6月14日(日)まで開催。かなりの混雑が想定されるため、事前チケットを購入するか、開館と同時に行くかするのをおすすめする。
展覧会名:ブルックリン博物館所蔵 特別展古代エジプト
会期:2026年3月20日~6月14日
会場:あべのハルカス美術館
公式ホームページ:ブルックリン博物館所蔵 特別展古代エジプト
ライター:石倉佳奈
広告代理店で6年間営業マンとして勤務した後、1年間日本全国の美術館をめぐるひとり旅へ。現在はSEOライティングやインタビューライティング、イベントディレクターなどさまざまな仕事を請け負うフリーランスライターとして活動中。日本全国の美術館と博物館を制覇すること、ヒマラヤマーモットを飼うことが今の
夢。
