【考察】NikeとGucciはなぜ失速したのか?──ナイキ原宿閉店までの変遷と“Z世代バブル”の終焉と、その構造的類似

· アート,ファッション

かつては「手に入らないこと」が最大のステータスだった。だが今、それは“ダサさ”に転化する。2020年代前半にZ世代から爆発的な支持を得たNikeGucci。しかしその栄光は、意外にも短命だった。ストリートファッションとハイブランドが仕掛けた“バズ”の行き着いた先は、ブランド価値の逆流だった──。

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「売れすぎた」ブランドの、その後

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NikeもGucciも、一時は「欲しくても買えない」ことが最大のマーケティング資産だった。

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ディオールxジョーダンコラボ 引用元:

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Nikeは、DunkやAir Jordan 1の再評価とTravis Scottとのコラボでストリートの頂点に立った。

Gucciは、アレッサンドロ・ミケーレの奇抜でポップな美学を、Z世代のSNSカルチャーにぶつけてバズを量産。

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だが、いずれも「限定感」「希少性」「新鮮さ」への依存が強すぎた**。

この“バズ・エコノミー”は、鮮度が落ちた瞬間に効力を失い、ブランドごと時代遅れにされてしまっている。NIKEは旗艦店である原宿店の2025年8月末で閉店となる。

これがルイヴィトンやディオールを旗艦としたLVMHとグッチ率いるケリンググループの株価を物語る。

LVMHは1980年から2020年にかけて売り上げは3倍、利益は4倍になったと言われている。

LVMHはルイヴィトンをはじめ、伝統を守る方針を貫いた。

一方で、グッチはお家騒動によってケリンググループが株式取得した背景もあるが、最先端のファッションのトレンドを追求し、おかげで流行を常に生み出した。そのため希少性や流行のファッションの前線にいる戦略をグッチは取ったのだ。

しかし、その業績は微増または横ばいであると言われている。

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“買えない戦略”の失敗と、デザインの罠がそこにはあった

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NikeはSNKRSでの抽選

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販売を常態化。欲しい人に届かない仕組みが、逆にブランドへの不信感を生んだ。

Gucciとadidasのコラボも、価格とデザインの奇抜さが話題になったものの、実用性や普遍性に欠け、「一度履いたら終わり」な印象を与えてしまった。

「頑張って買ったけど、結局あまり履いていない」

同時に「買いたいけどどうせ買えない」という層が増えれば、ブランド熱は急冷する。

“イケてる”が“ダサい”に変わる瞬間

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引用:Bloomberg

ストリートファッションのアイテムは、ときに「空気」のように価値が変わる

いったん「流行遅れ」と認定されれば、どんなにデザインが洗練されていても「古くさい」「イタい」と見られてしまう。特にZ世代は、そうした空気の変化に敏感だ。

かつて“入手困難な神スニーカー”だったものが、メルカリで捨て値になった瞬間、集団心理は反転する。
そして、「あの頃みんな履いてたよね」と懐古の念が強まり、次第にダサいと感じられるようになっていった。

ナイキがダサいに変わるまでの変遷

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ストリートのナイキとファッションのナイキの間のレイターマジョリティーのZ世代とY世代

ナイキのエアフォース1やエアマックス90の白スニーカー、エアマックスココなどを見てもわかる通りおしゃれな女性もファッションアイテムとしてしっかり取り入れていた。

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NIKE エアマックスココ

ナイキのスニーカーはエアジョーダン1Low Travis Scott x fragmentモデルやエアジョーダン1とディオールのコラボが出るとその熱は最高潮に高まった。

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さらにシュプリーム・エアフォース1 MIDなどSupremeなどのストリートブランドとのコラボでも人気となり、スニーカーコレクターとストリート好きのファン層の熱を呼び起こした。

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一方で普段履くダンク・シリーズがファッションアイテムとして男女とも人気となる。

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この後、ナイキのスニーカーの最もコアファンそうであるバスケットボールファンには待望の「THE FIRST SLAM DUNK(スラムダンク)」の映画が公開され、エアジョーダンシリーズが再び復刻されていき人気となる。

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宣伝ポスター:https://amzn.to/41raHRJ

作中の流川楓や桜木花道の着用モデルが特に人気を呼んだ。

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NIKE エアジョーダン2:https://amzn.to/47eqCq8

そして最後にファッションアイテムとして、ブレーザーミッド77がファッションアイテムとして様々なセレクトショップなどに重宝されたが、そのトレンドが過ぎると売り上げが一変。

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ナイキ ブレーザーミッド77: https://amzn.to/4m4JQmX

2024年から減収減益のフェーズに入り、2025年3~5月では前年同月比86%減という事態に追い込まれている。

プレミア戦略の終焉

NikeとGucciに共通するのは、ブランド

が自ら仕掛けた「プレミア感」によって、自らの価値をバブル化させてしまったという点だ。

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しかしそのバブルは、一度割れれば元には戻らない。

今の時代に必要なのは、「限定性」ではなく、「共感性」と「使われる文脈」である。

ただ“持っている”ことが価値なのではなく、
「日常で使われることに意味がある」プロダクトこそが、ロングセラーになるのだ。

Z世代は“見抜いている”?

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引用:

Z世代はもう、“仕掛けられたトレンド”に踊らされない。

彼らが求めているのは、自分の価値観にフィットするもの。
一過性のバズではなく、生活や感性に根ざしたブランド。

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adidas サンバ

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コンバース ALL STAR

NikeもGucciも、次のステージは、いかに「信頼」や「共感」を積み上げられるかにかかっている。

巻き返しなるか?

ナイキとグッチの再建計画

ナイキもグッチも経営再建のために新たに新CEOを就任させた。

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Luca de Meo ルカ・デメオ (ケリンググループ・グッチ CEO)

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Eliott Hill エリオット・ヒル (ナイキ CEO)

ナイキはいち早く、昨年ジョン・ドナホー前CEOを退任させ、エリオット・ヒル現CEOに交代する人事を行った。

しかし、今ひとつ効果は出ていない。

その間、ナイキは傘下で業績不振のコンバースの再建から着手している。

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グッチは一方で重い腰をようやく上げたばかりだ。

新CEOのルカ・デメオ氏をフランス自動車メーカーのルノーから引っ張ってきた。

サポートに副社長にはケリンググループで20年在籍でボッテガ・ヴェネッタやサンローランを担当してきたフランチェスカ・ベレッティーニを起用。

クリエイティブディレクターのサバト・デ・サルノを退任させた。

その後任は未だ見つかっていない。

その中で25-26秋冬ミラノコレクションは開催された。

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グッチも再建には時間を要するようだ。

一方で良い話もある。

ナイキは元々のスポーツブランドとしての原点に立ち返り、アスリートへのリスペクトとしてリブランディングをかけている。

また足元ナイキは最近ローファーシューズが話題だ。

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ブランディング回復の間をローファーで巻き返せるかが今後の鍵であろう。

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