楽しい夜ふかし『ドルフ・ラングレン in ディテンション』

· 文化・食べ物

アメリカン・ハイスクールの不良になってみたい。車かスケボーで登校し、ロッカーの並んだ廊下で女の子とアイ・コンタクト。スタジャンを着て授業をサボり、校舎裏で悪い友達とつるんでいよう。生活指導のドルフ・ラングレンにケチをつけられても気にしない。罰として居残り?せっかくの金曜にサイテーだが、いい考えがある。先公がいつもふんぞり返っている教卓の上に乗って、天井裏から脱出するんだ。俺は誰の言いなりにもならねえ。マヌケな先公を物陰から笑ってやろう。ん……?銃を持ったあの男は、一体誰だ?



 俺に気付いた男は、容赦なくぶっ放してきやがった。クソ、逃げるしかねえ。他に居残りをしていた皆はどこに行った?おっと、ドアの陰に先公がいるじゃねえか。ビビって隠れてるのかと思ったら、爆弾を仕掛けてるって?なんてこった、ボスニア帰りの元軍人ってウワサは本当だったんだ!


 

 あとはドルフ・ラングレンが無双するだけ……と思いきや、意外にも居残りを食らった不良たちが大奮闘するアツい映画が『ドルフ・ラングレン in ディテンション』だ。この記事がアップされるのは年明けになるだろうが、私は本作で2025年の映画を無事に納めた。一年を締めくくるにふさわしいお気楽、能天気、ご都合主義である。素晴らしい!ちょっと、この“いかにも”なアメリカ映画について、話をさせてもらいたい。



 本作はいわゆる“ダイ・ハードもの”の一種である。テロリストと同じ建物内にて、ハイド・アンド・シーク、ヒット・アンド・アウェイに戦っていく、アクション映画のサブジャンルだ。私はこれが大好き。最近見たのだと、ショーン・アスティンが雪山でダイ・ハードをやる『アイスブレイカー』が面白かった。祖である『ダイ・ハード』が世界一面白い為、枠組みだけ頂戴すればある程度は面白くなるって便利なサブジャンルなのだ。たぶん、必然的に主人公が危機的状況に居続けることが要因だろう。敵と半径何メートルの距離にとどまって、退屈する暇がないわけだ。



 本作の舞台はハイスクールということで、“ダイ・ハードもの”の枠組みをそのままに、ロケーションを活かしたギミック、アクションが展開されるのだが、正直言って対した出来ではなく、観客から酷評されている。確かに、00年代に大量に量産された(ドルフ・ラングレン、スティーヴン・セガール、ジャン=クロード・ヴァンダム、ウェズリー・スナイプスらの顔がレンタルショップにずらっと並んでいたものだ)低予算アクション映画の一つ、そう気合いの入った作品ではないかもしれない。



 お話だってあまりにもグダグダだ。ほとんど破綻しているといっても過言ではない。職人シドニー・J・フューリーの仕事ぶりによって、なんとか面白い映画には仕上がっていると思うが、あまりの物語のグダグダっぷりに鼻白んでしまう人がほとんどだろう。敵も味方もアホばかり、銃は誰にも当たりゃしない音の鳴るゴミだが、ドルフ・ラングレンが握った途端にオートエイムとなる。敵に見つかった、どうやって逃げる?答え→敵が追いかけるのをやめる。いくらご都合主義に甘い私でも、ここまでご都合を連打されるとちょっぴりウンザリだ。



 とはいえ、全編に通底する甚大なエモーショナルに、私はクラクラしっぱなし。まさに、夜ふかしをしてテレビをつけたら吹き替えでやっている映画そのもの。ゼロ年代の低予算アクション映画って、どれもそういった香りをまとってはいるんだけど、本作は特にエモい。あまりにもグダグダな有様が、ダラダラと深夜まで起きている自分とリンクし、私と『ディテンション』に絆が生まれるのだ。後はそれを育むだけ。見終えたらすべて忘れてかまわない。私と『ディテンション』のお付き合いは、こういうものだ。



 悪役のルックスもメチャいいんだよね。全員パンクスのような見た目をしていて、リーダー格とデキている紅一点の悪役はピンク・ヘアー。計画がうまくいったらおもむろにディープキスするのも、超アメリカっぽい。対する不良生徒たちも個性豊かで、なんだかんだ全員イイ奴ら。ああ、こんな映画をずっと見ていたい。物語の破綻が何だ?そもそも映画は、破綻などしようがない。画面に提示されるものを見続けるだけなのだからね。ということは『ディテンション』に欠点はない。つまり傑作ってことだ。じゃあ、一緒に夜ふかしをしよう!

ライター:城戸