シリーズの思い出と、大きな誤算/『デッドコースター/ファイナル・デスティネーション2』

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 『ファイナル・デスティネーション』シリーズの6作目がついに日本公開決定!実に14年ぶりの新作だが、もう作られないものだと思っていたよ。5作目の『ファイナル・デッドブリッジ』公開時には、「興行が伸びればまた作りますよ」的なスタンスを表明していたはずなのだけど、音沙汰ナシ。5作目はヒットしたんだから作られなきゃおかしいと、アメリカの一般人が作った『Final Destination 6 Trailer』なんて動画に騙され続けるのが私の青春だったのだ。まあ、そもそも4作目である『ファイナル・デッドサーキット』が最終作と銘打たれていながら5作目が制作されたのだから、もともと口約束を守らないシリーズであるとは言える。



 ともあれ、14年ぶりの新作には心が躍る。このシリーズは、私の映画人生でも相当な思い入れのある作品なんで、今日はちょっとお話させてもらいたい。



 さて、私にとって、このシリーズがどんな風に特別なのかというと、「面白すぎる」ことである。さすがに超有名作なんで知っている方も多いとは思うが、このシリーズは“死の運命”に翻弄される人間たちを描いた作品だ。簡単な話で、死亡事故から奇跡的に生還した人間たちに対して、死神ともいうべき存在が「君たち、奇跡的に助かったのか知らないけど、もともと死ぬ予定だったんだから、ちゃんと死んでくださいね」と、日常の色んなシチュエーションやアイテムを使い、ピタゴラスイッチ的に殺していくのだ。死の運命からは逃れられない。いや、まったく面白いアイディアである。何やってても死ぬから、感傷的なドラマなど発生しえない。登場人物たちが一体どのようにして死んでいくのかを、手に汗握って鑑賞する悪趣味なジャンル映画である。



 その死に様は決まってグロテスクだ。1作目はサスペンスの側面が強いのだけど、2作目以降は死にざま展覧会、どう風が吹いて、どう桶屋が儲かるか、ここが本シリーズの作家の腕の見せ所となる。語れば語るほど悪趣味だが、コレがまあ面白いのだ。『科捜研の女』すらイヤなほどグロが苦手だった中学生の私は、このシリーズを見て、あまりの面白さに、グロへの苦手意識を克服した。『ファイナル・デスティネーション』は、美味しいピーマン料理だったというわけである。



 そんな神シリーズだが、ハイウェイ事故をテーマにした2作目である『デッドコースター/ファイナル・デスティネーション2』がヤバイ。私のオールタイムベストに15年以上君臨し続ける神映画。何度見たか分からない。悪趣味さもスピード感も全開。『マトリックス・リローデッド』の第二班監督としてハイウェイ・カーチェイスのシーンを撮りあげたデヴィッド・R・エリスが監督を務め、同じくハイウェイでの大惨事を絶望感たっぷりに演出している。グロさも平均以上。多種多様なアイディア(死にざま)をふんだんに楽しめる豪華版。NetflixにもU-NEXTにもあるから、見てないならさっさと見てほしいものだ。何をしている?



 デヴィッド・R・エリスは、4作目の『ファイナル・デッドサーキット』(もちろん傑作)も監督。シリーズ外では、『セルラー』『スネーク・フライト』といったひたすら面白いとしか言いようのない映画を作っている、まさにジャンル映画の職人。元々はスタントマン出身であり、アクション畑で培われた運動神経を映画作りにも活かして優れた活劇を生み出す名手であったのだが、2013年に急死、多くのファンが悲しみに暮れた。もう一度、彼の『ファイナル・デスティネーション』を見たかった……。本当に惜しい人を亡くしてしまったものだ。



 最後に、シリーズ、特に2作目を語る上で外せない“大きな誤算”について触れておかねばなるまい。この誤算とは日本国内でのタイトルについてなのだが、1作目『ファイナル・デスティネーション』に対して、2作目の邦題は『デッドコースター/ファイナル・デスティネーション2』。ジェットコースター的に人が死んでいくことから、“デッドコースター”というタイトルが日本の配給会社によって追加された。『ファイナル・デスティネーション』って長ったらしいし、日本人には馴染みのない英語だから、短くキャッチーなタイトルを据える判断は妥当と言える。しかし、シリーズ3作目が発表されたとき、その命名を後悔しただろう。なぜなら、3作目の舞台が、ジェットコースターだったのだから!



 この誤算のせいで、シリーズの邦題はなんかヘンな感じになっている。順番も分かりづらい。どうにも勿体ないのだが、こればかりは仕方がない。まさに、変えられない運命であったのだ。



 6作目である『ファイナル・デッドブラッド』は、10月10日に劇場公開、10月22日にDVD・ブルーレイ発売。

ライター:城戸