北斎・広重をじっくり見るなら京都文化博物館に行け!静と動の緩急と描き分けを楽しむ静かな空間

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2026年のゴールデンウィークは最大で12連休だったそうだが、フリーランスの筆者は半分ほどは仕事をしていた。人混みが苦手というのもあるが、わりと慌ただしい日々を過ごしていた。しかし、最終日の5月10日は全国的に快晴で「こんな日に出かけないなんて勿体ない!」と美術館に出向いたのだ。


今回訪れたのは4月18日から「原安三郎コレクション北斎×広重」を開催中の京都文化博物館だ。ここが意外にも穴場で、京都市内の中心地でゴールデンウィークの日曜日というのに、ごった返すような混雑もなく、静かに展示を観られたのだ。


残念ながら写真撮影はほとんどできなかったが、今回は京都文化博物館で観てきた北斎作品と歌川広重の作品について語ろうと思う。


水の描き分けを「滝」で観る!北斎の”動”の執念

展示では、まず北斎の作品から並ぶ。富士・滝・橋・怪談と被写体ごとにテーマが分かれている構成となっている。その中から『滝』にフォーカスしてみよう。


北斎の滝で注目すべきは”水”の描き分けから観察できる「動」の概念だ。実際に渓谷で滝を見てみると水流の速さによって滝が上から下に落ちる様子というより一つの柱のように止まって見えることはないだろうか?


むしろこの状態だと”静”なのであるが、北斎はそこに必ずある水の動きをそのまま描写している。「諸国瀧廻り 下野黒髪山きりふりの滝 」では、下流に到達した水しぶきが、まるで人々にかかる勢いそのままに”点”で描かれる。日本画では雨が線で描写されたりするが、北斎は水を点でも捉えている。


しかし、「千絵の海 甲州火振 」では人々が荒い水流の中で漁をしている。水面では滑らかな絹のような規則性のある動きを捉えているが、縁の部分では進行方向が変わり、水の飛沫が細かく描写されている。


このように、北斎は滝などの水の動きをもひとつひとつ捉えようとしているのが分かる。大胆な構図に注目されがちではあるが、細部まで見てみると”動”をいかに再現しようとしているのかが分かる。


やはり定期的に観たい「富嶽三十六景」

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「冨嶽三十六景 信州諏訪湖 」天保1−天保3年(1830-32)頃/木版多色刷 横大判錦絵



もうひとつ北斎の作品の水に関連する作品から注目したい。先ほどとは打って変わって湖の風景画だ。「冨嶽三十六景 信州諏訪湖」の水面は線も点もなく、薄い藍と紙のグラデーションと、水平線が無くなって空と一体化している静かな朝の風景が美しい


ここで、印象派の湖の作品と比較したい。下はモネの「ラ・グルヌイエール 」(1869年)とルノワールの「ラ・グルヌイエール 」だ。この二つの湖の水面では光を反射していることで多少の揺れと穏やかな昼間の様子を映し出している

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クロード・モネ「ラ・グルヌイエール 」(1869年/75x100cm/油彩 キャンバス

オーギュスト・ルノワール「ラ・グルヌイエール 」(1869年/油彩、カンヴァス   )

オーギュスト・ルノワール「ラ・グルヌイエール 」(1869年/油彩、カンヴァス

時間帯は違えど、どちらにも舟が映し出され、人の気配があるのが分かる。それでも波の描き方がこんなにもちがうのはおもしろい。

”静”の広重の風景

画と藍

一方、広重の風景画は”静”を捉えている。「東海道五拾三次之 内」が代表作であるが、今回は「武陽金沢八勝夜景」に注目しい。


「武陽金沢八勝夜景」の水面は水色一色で均一の取れた動きのない水面が特徴だ。白と藍と黒で水を細かく描写する北斎の滝とは異なり、一面絨毯のような水面が広がることで果てのない広大さを表現している。しかし、空のグラデーションと中央にある真ん丸の月が、水面の描写と反している点もこの作品の面白いポイントである。

同じ場所を描いても違う表情を魅せる北斎

と広重

北斎と広重の作品を一度に味わえる本展では、それぞれの特長や被写体、風景の描き分けが醍醐味といえる。京都の中心地でじっくり鑑賞できる静けさの展示室もまた素敵だ。「原安三郎コレクション 北斎×広重 」は6月14日まで。ぜひ観に行ってほしい



展覧会名:原安三郎コレクション 北斎×広重

会期:2026年4月18日~6月14日

会場:京都文化博物館


ライター:石倉佳奈

広告代理店で6年間営業マンとして勤務した後、1年間日本全国の美術館をめぐるひとり旅へ。現在はSEOライティングやインタビューライティング、イベントディレクターなどさまざまな仕事を請け負うフリーランスライターとして活動中。日本全国の美術館と博物館を制覇すること、ヒマラヤマーモットを飼うことが今の夢。