は数年前、運転免許を捨てた。更新を放棄したのだ。話せば長くなるので割愛するが、捨ててよかったと思っている。地元でブンブン運転していた18歳の頃は3回も事故を起こしたし、北九州・小倉の交差点でパニクって涙目になっていたような私が銀座四丁目交差点を右折できるわけもないのだから、いつか人をはねてしまう未来を消しておくのは賢明な判断であった筈。そう言い聞かせ、自動車学校でかかった費用を思い出さないようにしている。
一方、アメリカのとある田舎町には、車を運転し続けている賢明でない男がいた。午後11時14分、携帯電話を片手に飲酒運転をしていた彼は案の定、人をはねてしまう。保身の為、死体を車のトランクに詰めて証拠隠滅を図ろうとする彼は、後ろから近付いてくるパトカーのランプに慌てふためく。
同時刻、午後11時14分。同じ町で、賢明でない若者3人がバンを運転していた。彼らは飲酒運転どころか、すれ違う車にモノを投げつけたり、燃えている本を歩道に捨てたり、窓からチンポを出して小便を撒き散らしたりとやりたい放題。迷惑の限りを尽くした挙句、最後には若い女性をはねてしまう。ショックで呆然としている3人は、彼女の恋人と思われる男がこちらに向けて撃った銃の音で正気に戻り、その場から急いで逃げ出す。
ほら、見たことか。私は免許を捨てたからいいが、アメリカの田舎町では、同時刻に2件も死亡事故が起こっている。やはり免許を捨てた私は懸命だったのだ!
自分を慰めるのはさておき、2003年製作のアメリカ映画『11:14』は、その2件の交通事故を巡る群像劇だ。サスペンスでもあり、シニカルなブラックコメディでもある本作は、本国アメリカでは勿論のこと、劇場公開されずビデオスルーとなった日本でも人気を博した。この5つのパートに分かれた悲惨な群像劇が、とにかく面白かったからである。私が映画を見始めた頃に「隠れた傑作」としてよく名前が挙がっていたのを覚えている。今はあんまり見なくなった気がするけど、当時はビデオスルーの群像劇って結構多かったよね。『アルファ・ドッグ』とか、『ザ・ゲーム』とか、『ブレイキング・ポイント』とか……。流行っていたのだろうか?劇場公開されたけど、『バンテージ・ポイント』とかめちゃくちゃ面白かったしね。
話がそれてしまったが、00年代に色々あった低予算の群像劇の中でも、本作は一際面白い。難しいことは何も考えず、ただ見ていれば笑えるし、いくつもの伏線が回収されていく快感を味わうことができるだろう。品の良い撮影のなかでギョッとするような死体が映ったりと、00年代っぽいシニカルさも楽しい。私も十数年ぶりの鑑賞であったが、やはりメチャ面白くて、エンドロールが流れ始めたとき、思わず声を出してしまった。まだ50分ほどしか経っていないだろうと思っていたのだ。
何よりもキャストが素晴らしい。まず『E.T.』の主人公でお馴染み、ヘンリー・トーマス。ロドリゲスの『パラサイト』での印象が強い、90年代から00年代にかけて色んな映画に出ているショーン・ハトシー。本作の撮影当時すでに『ボーイズ・ドント・クライ』でオスカーを獲得している名優ヒラリー・スワンク。『ホステージ』でのサイコパス役が印象的な、今や演技派としてハリウッドの第一線で活躍し続けるベン・フォスター。かのトム・ハンクスの息子で、00年代には色んな映画で見かけた(代表的なのはやはり『オレンジカウンティ』か)コリン・ハンクス。『ゴースト/ニューヨークの幻』や『ハートブルー』など、言わずと知れた往年のハリウッドスター、パトリック・スウェイジ。現在はマーベル・シネマティック・ユニバースにてフィル・コールソン役を演じているクラーク・グレッグ。そして『シーズ・オール・ザット』以降、一世を風靡していたレイチェル・リー・クック!と、まあ豪華な面子が揃い踏みなのだ。救急隊員役でリック・ゴメスとジェイソン・シーゲルも出てくるぞ!
私は映画を見て時間を短く感じることはほとんどないのだが、私の青春時代に大体画面に映っていたこの面子を拝んでいたら、ノスタルジーによって時間が溶けてしまうのも無理はないだろう。特にショーン・ハトシーとかやばいよ。『パラサイト』は勿論、『ジョンQ 最後の決断』でも良かった。『アルファ・ドッグ』もね。いきがってるけど人間くさい、みたいな彼のキャラクターが大好き。近年はメインの活動の場をテレビに移しているから、あまり映画で見ることはなくなったけど、画面にあらわれると嬉しくなる俳優の一人だ。ベン・フォスターも大好き。『ホステージ』での彼がとにかくいいんだよ。『セインツ 約束の果て』とかメチャ良かったなあ。名前を聞いてピンと来ない人も、画像検索すれば顔を見たことくらいあるはず。色んな映画に出てるから。あとは何よりもレイチェル・リー・クック。「ゼロ年代の美少女」といえば必ず思い出すひとり。ほかにもエリザ・ドゥシュク、アマンダ・バインズ、アレクシス・ブレデル……と、ビールを飲みながら夜通し挙げていきたい。免許を持ってないから、どれだけ酒を飲んでも、次の日に持ち越しても、電車で帰りゃ平気なのさ。
ライター:城戸
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