
0594B431-6F6C-49DF-895F-9D5655DD2517
『TOKYO GRAFFITI』という雑誌を知っているだろうか。とは言っても、筆者も購入したのは今回が最初で最後なので、あまり知っているようなことは言えない。ただ、本屋で見かける『TOKYO GRAFFITI』はいつも異彩を放っていた。
ではなぜ、今回購入したのか。それは2025年3月をもって『TOKYO GRAFFITI』が終わってしまうからだ
本誌は2004年から発売されたカルチャー誌なのだが、あくまで主人公は一般人。雑誌コーナーでは数々のモデルや俳優、アーティストたちが表紙を飾るなか、『TOKYO GRAFFITI』は街ゆく人たちの姿を表に出している。その独特さと異質さが筆者は好きだった。それと同時に、なぜか誇らしかった。芸能人が媒体を飾るのは当然のことだが、“そうじゃない人”の方が、世のなかでは圧倒的に多いから。そんな私たちにスポットを当ててくれたのが、嬉しかったのかもしれない
そんな『TOKYO GRAFFITI』のファイナルを飾るのは、人気企画「タイムスリップ写真館」だ。あのころロリーターガールだった女性が、いまは3児の母に。キッズダンサーだった男の子がパティシエに。10年、20年、30年、みんなそれぞれの人生を歩んで、あのころと同じポーズで写真を撮る。
後半は「TOKYO LOCAL」のコーナーへ。秋葉原、新宿2丁目、池袋……。いろんな街で生きる人たちをカメラに収めている。
読んでいると、とても不思議な気持ちになってくる。きっと、この人たちと街ですれ違ったとしてもなんとも思わないはずなのに、こうして一人ひとりをじっくり見ていくと、当たり前だけどそれぞれの人生がそこにある。みんないろんなところで今日も生きているんだな、ということがわかるだけで、不思議とパワーをもらえる。
なぜそこまで思うのかは、きっと掲載されている方たちが圧倒的にリアルだからだろう。モデルや俳優のように、カメラの前に立つことに慣れていない、素人。その生々しさ、人間らしさを感じるから、「あぁ、この人たちも生きているんだな」と感じることができる。
これは想像だが、これだけの人数を撮影するのは相当な労力がかかったのではないだろうか。検索したって見つかるわけじゃない、普通の人たちだ。どれだけ練り歩いて、何度街を訪れて、何人に声をかけて作り上げたのだろうか。
でも、だからこそどの雑誌よりも“いま”を切り取っていると筆者は思う。編集後記では、本誌のことを「時代のアルバム」と呼んでいる。あの時代を生きた人たちのリアルを残す、『TOKYO GRAFFITI』というコンテンツに出会えてよかった。そして、この雑誌に掲載されている人たちと同じようにいまこの瞬間を生きる自分を愛してあげたい。。
ライター:はるまきもえ