「科学者」と聞いて、皆さんはどのような姿の人間を思い浮かべますか。
白衣を着て、フラスコを手にして、何か不思議な機械の前に立って、謎の実験を繰り広げたりする、そして、長い髭があったりなかったりする『男性』の姿がほとんどでしょう。
理系女子、という言葉が存在するように、女性は理系であることだけで今でもなんとなく珍しいとされています。「リケジョ」なんて言葉もありましたね(個人的に、なんとなく好きになれない言葉でもありますが……)
そして私達が「科学者」と聞いてぱっと想像するのは上記の通り、だいたい男性の姿です。
けれどこの本は、古代から現代まで、自然科学・工学・数学、そして医学などの様々な分野で偉業を成し遂げた女性科学者たちが『50人も』紹介されています。
そんなにもいるんだ! とまず驚くことでしょうが、いるのです。
この本は、科学に生涯の全てを捧げた、私達のまだ知らない素敵な生きざまの女性達がたくさん紹介されている、そんな本なのです。
昔、女性が教育を受ける機会というものは貴重でもありました。女性だから、という理由で論文を発表することが出来なかった時代もあるのです。
そしてこの本は、いわゆる「良妻賢母」こそすべて! みたいな殿方達の、そして時には同志でもあるはずの女性達からも、そういった古い価値観や固定観念を押し付けられながらも、自分自身を信じて論文を(時には偽名を使ってまで)発表し、進んで独学で研究を続けていた女性達の伝記が50人分もこの1冊に詰まっているのです。
開いてみると、見開きで説明文とイラストが描かれています。
世界にはこんなにもすごい女性がいたのか! と、とにかくびっくりすること請け合いです。好奇心もばっちり刺激されます。絵本と図鑑の中間地点くらいの本です。(後述しますがこんなにもボリューム豊かなのにお値段が手ごろなのもいわゆる「推し」ポイントですね!)
この本で紹介されている女性で特に有名なのはやはり、キュリー夫人ことマリー・キュリー。(そもそも伝記のタイトルが「●●夫人」ってなるのは何なんでしょうね。「●●の母」「●●の娘」じゃあるまいし!)
古代の伝説の女性数学者ヒュパティアは「アレクサンドリア」という映画にもなっています。
最近では核分裂を発見したリーゼ・マイトナーの生涯も邦訳が出ました(私の好きな漫画家でもある、こうの史代の短編集にもその生涯が収録されています)
生涯愛する虫を描きつづけたマリア・ジビーラ・メーリアンの美しい昆虫画や植物画も邦訳されています。虫めづる昆虫学者にしてイラストレーターである彼女の描く絵1頁1頁はとても躍動的で魅惑的です。
古生物学者メアリー・アニングも、その生涯が児童書になったり、その功績が認められて地元に銅像が建ったそうです(なんと最近では日本のソーシャルゲームにまで登場したりもしています)
世界初のコンピューター・プログラマーはエイダ・ラヴレスであり、10月の第2火曜日は「エイダ・ラヴレスの日」とされています。
海洋生物学者でもあり、作家でもあるレイチェル・カーソンの書籍はもはやベストセラーであり、だいたいの書店に行けば誰でも手に入れることが出来ます。
と、このように、古今東西、様々な功績やジャンルで名を残した女性科学者達の生涯や功績が、見開きで紹介されています。
当時は性別や人種を理由に、仕事をする場所も資金も、それどころか存在意義そのものさえも与えられることがなかった女性科学者の数多くが、今ではこうして少しずつ光を浴びてきているのです。
科学者とかよくわかんないし、全然知らないし……という人でも楽しく読める、うつくしくてしっかりした装丁と、とびっきりチャーミングな挿絵(これで税込2,000円以下で買えるなんてとてつもなくお得だと私は思っています)に満ち満ちています。
ちりばめられた文字や絵はどれもうっとりするほどカラフルでかわいく、美しいものです。娘や姪などといったお子さまにプレゼントするのにもピッタリな本ではないかと思います。
正直な話、私はこの本を隅から隅まで彩っている、とってもかわいらしく美しいイラストレーションにひとめぼれして買ったのです!
ですが今では、元気が出てこない時、お前は女だから! みたいなことを(まれに)言われて凹んだ時、自分を信じる力が湧いてこない時のお守りのような一冊になっています。
なお同じシリーズで、「50人のアーティスト」「50人のアスリート」も販売されています。個人的には「アーティスト」はとてもやる気がでる一冊であり、「アスリート」はとても元気の出る一冊です。
いつか何かになりたい女性も、そうでない女性も、そして女性だけではなく、男性の皆様も、心のお守りのように読んでみて欲しい当シリーズ。
機会がありましたら是非、お手にとってみてください。
@akinona